野鳥のさえずりに導かれ、ゆるやかなコースを登る。

「そういやｱ小学生の時分に登ったﾜ」「ああオレもや」。地方の方に尋ねれば、懐かしそうに目を細め、思い出話に花が咲く・・・・・。駅から歩いても頂上まで二時間程度の十二坊（岩根山）は、手ごろなハイキングコースとして、湖南では愛着のある山。皆が声を揃え誉めたたえる展望を一目見ようと、一路コースへ足を向けました。きれいに舗装された林道をひたすら上へ。澄んだ空気は心地よく、坂道も苦になりません。BGMは、ウグイスのさえずりとせせらぎの音。樹林の奥から時折、ハイカー達の愉しげな談笑が耳に入り、登山ムードを高めてくれます。林道を小一時間ほど登ったところにある木製の展望台で一休み。心地よい風と見晴らしに、汗がスーッとひいていきました。

 

湖南市一帯を望む、圧巻のパノラマビュー。

展望台から5分ほどで頂上に到着。砂地状の広場に上がると一気に視界が開け、湖南市一帯を望むパノラマに圧倒されます。阿星山や飯道山をアクセントに、どこまでも続く空。絶景に見惚れるうちに、いつしか雄大な気分に包まれます。平安末期、「岩根の山の峰の若松」と讃えられた岩根山も、奈良時代の寺院（東大寺）、延暦寺や安土城の用材に樹林が伐採され、明治の頃には禿山同前に荒れ果てました。その後植林などの努力で豊かな緑が蘇ったのだそうです。春から初夏にかけ、サクラ、ツバキ、シャクナゲなどが彩りを添える岩根山。美しい山容を、大切に守ってきた人々の尽力に思いを馳せれば、眺望への感慨もひとしおです。

 

 湯の温もりと山間の風に歩き疲れもどこへやら

眺望をたぷり楽しんだら南へ下山。木の根や岩をまたぎながら30分ほど降りてゆくと、十二坊温泉「ゆらら」に辿り着きます。広々としたロビーで受付を済ませ、さっそくお風呂へ。大門坊（大浴槽）、宝乗坊（滝風呂）など、浴槽ごとに付けられた坊名が興味をそそります。十二坊の森を見渡せるという露天風呂にざぶり。毎分400リットルも湧き出る豊富なお湯は、神経痛や筋肉痛に効果あり。湯の温もりと山間の爽やかな風、そしてスタッフの暖かい対応が、山歩きの疲れをじんわり癒してくれます。